第9回東アジア経営学会国際連合モスクワ大会参加報告

東アジア経営学会連合 理事兼評議員

NPO東連ジャパン理事、アジア経営学会常任理事

 市田陽児(日本大学)

 2008年10月1日から3日まで開催された第9回東アジア経営学会国際連合(以下東連)モスクワ大会の様子を報告する。モスクワでの開催は1996年の第3回大会以来12年ぶりである。参加者は日本から16名、台湾(アジア経営学会会員)から1名、ロシアから21名、中国から106名、ベトナムから1名であった。とりわけ、12年前には中国からの参加者はわずか1名だったので、今回の大多数の参加者には隔世の感がある。

 初日には、ロシア連邦商工会議所において、主催者のプログラム委員長のState University of ManagementのGennady Azoev教授の開催挨拶、同大学の学長であるAlexey Mihajlovich Lyalin 教授の歓迎の挨拶、東連名誉会長野口祐先生および東連会長の孫 銭章先生の挨拶で始まった。その後、統一テーマModernization of economy and management developmentに関日本から一寸木俊昭先生、林倬史先生、加藤志津子先生の三人の先生およびState University of Management 教授、the Institute of New Economy の所長、ロシア科学アカデミー会員であるSergey Glaziev 氏、Head of the Analytical CenterのAndrey Zverev氏、東連会長の孫 銭章先生、Chamber of Commerce and Industry of the Russian Federation、Committee on development of an aerospace complexの議長であるAlexander Belousov氏の報告とディスカッションが行われた。

 ロシア連邦商工会議所は赤の広場へ歩いて5分位のところに位置しており、ここで会議を開催するのは容易ではないとのことだったが、プログラム委員長である前述したGennady Azoev教授のご尽力により市内の中心街で開催できたことは同慶の至りである。歓迎パーティの後、夜9時ころに、赤の広場へ行ったが、昼と異なりモスクが夜空にライトアップされてお伽の国のような光景だった。

 二日目は場所をState University of Managementへ移し、次の5つのセッションに分かれて発表(日本から、貫隆夫先生、吉野文雄先生、劉 永鴿先生、市田)と議論が行われる予定であった。1.Development marketing concepts and management technologies in the modern company(司会:林倬史先生、加藤志津子先生他1名)、2. Innovation management under reinforcing competition(司会:市田陽児他1名)、3. Maintenance of competitive advantages for economies of East Asia countries(司会:吉野文雄先生他1名)、4. Risk, environment and energy (司会:井口知栄先生他1名)、5. Corporate strategy and corporate governance(司会:高久保豊先生他1名)
 筆者は、二人の通訳(英語からロシア語、ロシア語から中国語)を介しての研究発表を行ったが、貴重な経験だった。三日目はテクニカルビジットが予定されていたが、急に中止になり、それを期待していた日本の参加者は非常に失望し、善処を要望した先生もいたが、結局クレムリンの見学に変更された。この点を除けば、日本からの参加者の先生方は満足されたようだ。いずれにしても、本大会における日本から参加された先生方の学術的な貢献は多大であったことを強調しておきたい。

 東連の理事・評議員会に名誉会長の野口祐先生、評議員の望月邦彦さんと共に出席した。また、通訳として加藤志津子先生、高久保豊先生も同席された。名誉会長の野口祐先生は終身名誉会長に推挙され、承認された。新会長は理事の互選により、ロシアの State University of Management の学長であるAlexey Mihajlovich Lyalin 教授が選出された。東連の国際大会は2年ごとに開催されるが、次回開催の第一候補は韓国、韓国が開催不可の場合、第二候補としてモンゴル、モンゴルも開催不可の場合、第三候補としてベトナム、第四候補として日本が決まった。(ただし、今回はモンゴル、韓国からの参加者がいなかった)。英文雑誌は中国で刊行予定であったが、できなかった。今後は、刊行に向けて作業を進めていく、等が確認された。

 偶然が重なり、地下鉄4号線のメジュドゥナロードナヤ駅からジェロヴァイ ツェントル駅の間を歩いて2往復する機会を得た。そこは、今モスクワ市の再開発地域で超高層ビル群が建築中で、一部の建物はすでに完成してIBMなど有名企業がテナントとして入り、シティバンクが1階で営業している。その建築現場に道路を挟んで反対側に、3階建ての簡易宿舎が林立しているのは日本の飯場そのものだ。建物はモスクワ川沿いに建てられ、川沿いを歩くと、茶褐色の単身の若者が沢山生活していることが分かった。モスクワ市内にはスターリン・ゴシック様式と呼ばれる外務省など7棟の旧ソビエト時代の高層ビルがあるが、外壁をガラスで覆われた汐留界隈にみられるような現代的なビルはこの地域だけである。モスクワ市はこの再開発の予算がないので、マフィアが中心になって開発しているという噂もあるとのことだ。開発地域の規模の大きさからにわかには信じがたいが、ロシアでは何でもありという日本人留学生の言葉にも説得力があり、ありえるかなと思ったりする。情報が公開される社会ではないので、真実が分かるまで、時間がかかりそうだ。

 最後になりましたが、本大会のプログラム副委員長の貫隆夫先生におかれましては、1年前からロシア側との交渉の窓口として、数え切れないほどの障害、難問を乗り越えてこられました。同じプログラム委員として開催までの経緯を知っているだけに、貫隆夫先生には敬服申し上げるとともに感謝の意を表したいと思います。また、日本大学商学部の大学院生である遠藤梨栄さんには日本人参加者の募集、連絡の事務の手伝いに始まりモスクワでの案内をしてもらいましたが、これもNPO東連ジャパンからの資金面でのご支援がなければ不可能でしたので、感謝いたします。

(2008年11月吉日 記)