第10回東アジア経営学会国際連合ソウル大会参加報告

 林 倬史(国士舘大学)

 2010年10月21日から23日まで開催された第10回東アジア経営学会国際連合(IFEAMA、以下東連)ソウル大会の様子を報告する。ソウルでの開催は1993年の創設以来二度目である。日本、台湾、中国、ベトナム、そして韓国の各先生から報告があった。初日の21日には、漢陽(Hanyang)大学ソウルキャンパスの国際会議場において、開催国の同大学教授柳太洙(Ryu,Tae-soo)先生の開催挨拶、同大学大学院長の李丞哲(Lee,Sung-chul)教授の歓迎の辞、そして東連終身名誉会長野口祐先生の挨拶で始まった。その後、同会場において、日本から井口知栄先生(立教大学: Global Innovation Strategy of TNC Subsidiaries in South East Asian Countries)、中川圭輔先生(下関市立大学: A Study of Corporate Scandals in South Korea)、ベトナムから Tran Thi Van Hoa 先生とTran Kim Hao先生(National Economics University: Vietnam Economies and Measures to Enhance Macroeconomic Stability)の報告、中国から于金(Yu, Jin)先生(河海大学: Comparative Analysis on Market Performance of Auto Makers from Japan, Korea, and China)、および鄧兆武(Deng, Zhaowu)先生(魯東大学: The Study of Top Management Leadership in the Chinese State-owned Enterprise)、以上5名の報告、そして参加者とのディスカッションが行われた(司会:林 倬史)。

 22日の大会2日目は、二つの会場に分かれてそれぞれセッションが開かれた。ちなみに日本からの報告者とテーマは下記の通りであった。A会場では、塩地洋先生(京都大学: Chinese Electric Vehicles in Rural Areas)、吉野文雄先生(拓殖大学:Response of Japanese Companies to Economic Partnership Agreements)、桑原和典先生(琉球大学: The financial strategies of Tourism in Okinawa)、市田陽児先生(日本大学: The Globalization of Automotive Network Infrastructure: ENX Moves toward the East)、およびB会場では、中川涼司先生(立命館大学: Chinese IT Entrepreneurs and Their Business Models)、加藤志津子先生(明治大学: Business system in Kazakhstan)、笠原民子先生(四国大学: Issues of International Human Resource Management in Japanese multinational corporations)がそれぞれ報告した。

 大会3日目の23日にはテクニカルビジットが企画され、LGイノテック社のLED製造工場の見学が可能となった。これは、今大会から新会長になった柳太洙教授(漢陽大学)のご尽力によって可能となった。

 なお、大会に先立って行われた21日午前の第1回理事・評議員会には、元会長のA.M. Lyalin 教授およびG.Azoev教授がともに諸事情で急遽、参加できなくなった。そのため、議長役担当の会長が不在となったため、IFEAMA日本事務局代表という形で、林倬史が仮議長を務め、下記の議題が協議された。

(1)韓国側からの新会長の選出、(2)大会開催国と会長国事務局との業務分担と協力体制、(3)次回大会(2012年)開催国の確認、(4)英文ジャーナルを準備するためのジャーナル共同編集委員会設置案、(5)IFEAMA本部のHome Page 作成、(6)IFEAMA加盟国大学間での学生交換、(7)ナノ製品市場分野に関する共同研究、(8)その他。

上記議題のうち、(1)-(5)は共通議題、(6)・(7)はロシア側からの追加議題案として提起された。

 まず(1)新会長として、開催国・韓国の理事である柳太洙教授(漢陽大学)が推薦され、承認された。(2)に関しては、事務局業務もメンバー国間での相互協力をいっそう深めることが合意され、(3)の2012年開催国には、当初はベトナム案が有力視されていたが、協議の結果、在南京(中国)の河海大学、そして2014年に在ハノイ(ベトナム)の National Economics Universityで開催されることに決定した。議題案(4)・(5)に関しては、加盟国からそれぞれ委員を出し合って委員会を設置し、そこで早急に具体案を提示していくことが決められた。(6)・(7)については引き続き協議していくこととなった。(7)に関しては、河海大学の張陽(Zhang, Yang)教授から、同大学を含む共同研究テーマが確定した場合は、助成金を提供しうることも提起された。

 つづく10月22日の第2回理事・評議員会では、新会長の柳太洙教授が議長となり、前日の会議議題(下記)を引き続き協議した。

(1)ベトナム新役員の確認、 (2)次回大会(2012年)開催国および担当責任者の確認、(3)次々回大会(2014年)開催国および担当責任者の確認、 (4)新たな事務局体制について:(a)ホームページ担当ワーキング・グループ、(b)英文ジャーナル担当ワーキング・グループ、(c)英文ジャーナル編集委員会。

(1)については、Tran Kim Hao (Hanoi National Economics University, Vietnam)先生とTran Thi Van Hoa (Central Institute for Economic Management, Vietnam) 先生の2名が新たなベトナム代表の評議員として、理事にはTran Thi Van Hoa先生がそれぞれ就任することが確認された。(2)の次回(2012年)大会開催については、以下の通り確認された。開催国:中国、開催責任者:河海大学(Hohai University)の張陽(Zhang, Yang)教授。(3)の次々回(2014年)大会開催については、以下の通り確認された。開催国:ベトナム、開催責任者:National Economics UniversityのTran Kim Hao先生。(4)の新たな事務局体制については、ホームページ担当ワーキング・グループの日本側担当者として市田陽児理事、英文ジャーナル担当ワーキング・グループの日本側担当者として林倬史理事、そして英文ジャーナル編集委員会の日本側メンバーとしては、後日、アジア経営学会会員の中から適当な方を推薦することで確認された。

なお、20日の同理事・評議員会には日本側から、野口祐終身名誉会長、望月邦彦評議員、三井一郎財務副委員長、植竹晃久評議員、市田陽児理事、林倬史理事、柳町功大会組織委員、貫隆夫プログラム委員、加藤志津子事務局幹事、高久保豊両事務局幹事が参加した。

今回のソウル大会には、一時体調を崩されていた野口祐先生も体調を回復され、理事・評議員会のみならず英語での大会挨拶、学術会議での鋭い質問、そして懇親会に参加と大会を盛り上げていただいた。

 アジア諸国をベースとした諸企業の台頭が国際的に注目を集めるようになってきた今、東アジア経営学会国際連合(IFEAMA)もまた参加者の拡大と発表の質、そしてレベルの高い英文ジャーナルの定期的発行が喫緊の課題となってきている。

 最後に、ベトナムNational Economics Universityからの参加者に対しては、NPO法人東連ジャパンから資金面での支援があったことに感謝の意を表したい。

(2010年11月吉日 記)